大阪のものづくりに、女性がそのクリエイティビティーを発揮。技術を伝承し、新しい事業を生み出す原動力とは。

前略、確かな縫製技術に裏打ちされた、温もりのある布雑貨の世界に触れたいあなたへ。

大阪府泉南市にあるFACTORY KURAは、女性の職人だけでものづくりをしている縫製工場。蝶ネクタイやカマーバンド等が主力製品であるが、職人一人ひとりが持つ高度な縫製技術と、代表の太田綾乃氏の企画開発力で、SDGsを意識した自社ブランド雑貨が人気を呼んでいる。

 

一品一品、丁寧な縫製には定評がある。

 

 

絶対に「できませんと」は言わないこと。それが、FACTORY KURAとしての自信とプライド。

 

FACTORY KURAは、太田さんの母・加藤美三子さんが創業した。母娘二代に渡り、その品質に対するこだわりが引き継がれている。

 

「うちで、何ができるの?といわれたら、メインは蝶ネクタイですと答えるんですけど、実は、もっとクオリティの高いことができます。それは機械の技術ではなくて、特殊ミシンにしても、他の縫製工場さんでも持っているミシンですけど、それをどれだけ技術を上げて縫えるかというところでは他社さんとは差別化できています。この三巻の縫製でも、真っ直ぐ縫うだけならなんとかいけますが、角を縫うときは直角にあがっていないといけません。ラウンドして丸くなってしまうこともあるのですが、うちのは直角になっていて、今いる職人さんが、出来なくなったらもう止めようかといってるくらい、伝承するのが難しい技術なんです」(太田氏)

 

角が直角に仕上がっている三巻の縫製

 

 

KURAさんにしかできないと言われたい。

 

「特定のものだけしかしませんという工場ではないので、『KURAさんに相談すれば、なんとかしてくれる』といって持ち込まれる難しい案件も多いんです。結果できなかったということはあるんですけど、最初から『出来ません』とは絶対に言わずに、『とりあえずやってみます』といってお仕事は受けるようにしています。それがうちのこだわりです」(太田氏)

 

太田綾乃(Ayano Ohta)氏「株式会社FAKUTORY KURA」/1976年大阪府泉南市に生まれる。大阪芸術大学演奏学科(トロンボーン専攻)卒業後、母の縫製業を継ぐ。2005年、加藤美三子氏に替わり、代表に就任。2014年、「はぎれっくす」ブランドを立ち上げる。2021年よりネットショップ『暮らすぱいす』にて物販部門も強化している。

 

 

母の美三子さんが、ネクタイの縫製を友人と始めたのが、40年程前の頃。バブルの時代に差しかかり、作っても作っても発注が来たという。その後、業界は下火になり、「もう止めようと思っていた時に、娘が大学を卒業して、お母さんの仕事をやりたいといい出した」と美三子さんは振り返る。

 

「ずっと家に足踏みミシンがあったので、私は、小さい頃から触っていました。大学は大坂芸大に音楽で行ったのですが、在学中に音楽で食べていくことは難しいなと悟ったあたりから、『私は何やりたいんやろ?』と考えていました。嫌いなことやってもしょうがないんで。ただ、その時はすごく好きやったかといわれても、あまり分からなかったですけど、入ってみたらこの仕事、やっぱり天職やと思っています」(太田氏)

 

太田さんと母の美三子さん。工場を新築してその屋上で二人でビールを飲むのが夢。

 

 

廃棄物を減らすことで、環境への負担を減らす「はぎれっくす」

 

美三子さんの目から見ても「まあ、器用です。器用ですし、企画力があるので、色の配色でも非常にいい配色しますから、やっぱり天職でしょうね」と、太鼓判を押す。そんな太田さんが持ち前の企画力を発揮して、現在力を入れているのが自社ブランドの雑貨の開発だ。

 

「うちでメインで扱っているのが、蝶ネクタイとかカマーバンドなんですけど、それを作る生地というのは、ほぼシルクなんです。シルクは、今、どんどん値段も上がっている希少なものなんですけど、製品を作るときに切り落としたものは廃棄していました。ハギレといえどもシルクやのにということで、それを捨てない活動ができないかということを考えて作ったのがはぎれっくすなんです。ハギレを接ぎ合わせて蝶ネクタイを作ったり、うちはもともと小さいものを作る技術があるので、ちっちゃな生地で小物を作ったりしています」(太田氏)

 

太田さんが考案したチビタイのピンズは、ロングセラーの人気商品となっている。

 

 

 

「今までのお客様の仕事を大事にしながら、私のやりたいことを追求していきたくて、雑貨も作っています。それこそ、ぎゅーっとしたくなる、愛らしいものを作りたくて、REXくんを作りました」(太田氏)

 

はぎれっくすのREXくん。思い出の足踏みミシンとともに。

 

 

また、最近人気を博しているのが、和手玉のシリーズだ。

 

「私の母の母、お祖母ちゃんが作ってくれたお手玉がうちにあって、子どもの頃にかわいい巾着に入っていたのをずっと持ってたんです。それで、お手玉を商品化したいとずっと思っていました。小豆を入れると虫食いの問題が起こるので作れなかったのですが、私の兄のアドバイスで、バイオBB弾を使ってみると、ちょうどこの重さとチャリチャリ感がすごくよくて、それが、はぎれっくすブランドのシルクの和手玉なんです。中がバイオ素材だから、このまま森の中に置いておいたら、自然に返る商品なんですよ」(太田氏)

 

最後に、KURA FACTORYがものづくりで大切にしていることを伺った。

 

「私も母も一緒なんですけど、生地から入って来て、製品を作って、それを出荷する時には、『かわいがてもらえよ』と、嫁に出すような気持ちで出すというのが、どの商品にも共通していることです。この子(REXくん)でも、お客さんと出会った時には、連れて帰ってもらうような気持ちになります。ずっとその人に寄り添ってもらえたらと思うので、そういう思いのものづくりは、これからも変えたくないですね」(太田氏)

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